高校野球表紙私と高校野球

私と高校野球 昭和62年(1987年)
東海大浦安

勇気をありがとう(国府台在住)

 昭和61年秋の千葉県大会。いつも応援している東海大浦安は、その年の春夏の甲子園で優勝候補といわれた拓大紅陵と対戦し、もの凄い試合の末、サヨナラで拓大紅陵の4季連続優勝を阻みました。
 東海大浦安は、決勝では負けましたが千葉2位で関東大会に進出しました。

 関東大会での東海大浦安も、まるで映画のようにドラマチックでした。初戦は茨城大会優勝の竜ヶ崎一高との試合。詳しくは覚えていませんが、土壇場で同点に追いついて延長戦に突入し、最後はサヨナラ勝ちを収めたと思います。
 2回戦は遠藤投手が踏ん張って逃げ切り。東海大系列同士、東海大甲府との準決勝はリードを守り切れず終盤に逆転され負けてしまいましたが、関東大会ベスト4という素晴らしい成績を残しました。

 私が直接観戦したのは拓大紅陵戦と竜ヶ崎一高戦だけですが、両方とも延長戦となる熱戦で、心から感動しました。
 2月1日、見事、2年ぶりの春の選抜高校野球出場が決まりました。東海大浦安は、近隣というほどではないですけど近くて強いチームだったということもあり、夏に初出場を決める以前から応援していましたが、今度のチームが何度も劇的な試合をしているのを見て、甲子園で見たいという想いを強くなりました。この時はまだ甲子園に行ったことがありませんでした。

 仕事の予定を調整して休みを取ろうとあれこれ考えていた頃、突然の悲報でした。会社で朝刊を見て知りました。信じられない気持ちとショックからか、その日のその後の記憶はありません。

 甲子園には、補欠校の常総学院が初出場を果たす形で行きました。東海大浦安は甲子園に行けないばかりか、対外試合も禁止になってしまいました。当然、春の千葉大会にもその姿はありません。大きな穴が空いたような空虚な大会で、私はまともに1試合も観戦しませんでした。仕事もうまくいかないことが続いたりして、私の落ち込みは激しくなりました。

 4月下旬、こっそりと東海大浦安に行ってみました。練習をしていました。
 グラウンド横。私はハンマーで頭を殴られたようなショックを受けました。これは選抜出場が消えた時よりもショックだったかもしれません。
 選手たちは明るく元気に声を出していました。効率の良い練習や選手、スタッフの動きに、「まだ甲子園を捨てていない」ということがはっきりと分かりました。
 当事者の選手たちがこんなに前向きに頑張っているのに、無関係の私が何を暗くなっているのだろうと思いました。この日から、すべてのことに希望を持って前向きに頑張ることを決意しました。

 夏の千葉県大会。春の大会に出ていない東海大浦安はノーシードです。甲子園までは8試合もあります。その上、組み合わせ抽選は最悪でした。
 更にノーシードというだけでなく、あの劇的だった秋の関東大会以来、対外試合は行っていないのです。

 初戦はいきなり強豪の横芝敬愛高校。4点を先行され予想通りの苦戦。次の茂原工業との試合も3点を先行される苦しい試合となりましたが延長の末、サヨナラで何とか勝利を収めました。胸がつまりそうです。
 そして3回戦、早くも大きな壁です。秋の千葉県大会の決勝で負けた相手、優勝候補の八千代松陰戦です。しかし秋のお返しとばかりに打線が爆発しました。次々に打って、グラウンドを駆け巡る選手たちを見ているうちに涙があふれました。1点を争う緊迫した試合というのでもないのに、とにかく涙が出ました。選手たちがとても強くて感動しました。

 これで波に乗った東海大浦安は順当に勝ち進み、準々決勝は延長となる熱戦でしたが、見事に決勝戦に進出しました。八千代松陰の加藤投手の他、村山投手(法典)、石毛投手(市立銚子)といった好投手を打ち崩しての進出です。

 決勝戦は伝統の習志野高校が相手です。今の東海大浦安打線に、正面からぶつかって抑えるのは無理だと感じましたが、変則的な下手投げ投手に少し嫌な予感がしました。でも秋に対戦した時は大勝しているし、大丈夫だと言い聞かせていました。
 試合は不運なヒットで2点も取られてしまいますが、すぐにホームランで同点にし、2回にも2点を入れて逆転。いつも通りの展開に、「私の予感は見事に外れた」と思いました。この後、東海大浦安打線は抑えられ、頼みの遠藤投手も力尽き、「きっと追いつける」という願いも空しく、あと一歩のところで甲子園は逃げて行ってしまいました。
 スタンドの私はただただ泣きました。選手が挨拶に来た時は、心の底から「感動をありがとう、勇気をありがとう」と言いたかったですけど、まったく声を出すことは出来ませんでした。

 甲子園という想いは届きませんでしたけど、生きる力をもらいました。この年の東海大浦安は今でも最高のチームです。
 田代くん、今関くん、黒川くん、浅沼くん、西野くん、太田くん、正畑くん、下迫くん、そして遠藤投手、ありがとう。あれから随分時間がたってしまいましたが、この場を借りてお礼を言わせてもらいました。

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