根元を見たか


ずっと昔の話しです。
印内に重右衛門という人がいましたが、それは面白い奉公人でした。

奉公していた屋敷の境に隣の家の大きな木の枝が覆いかぶさって、うす暗くてなって困っていました。
なので隣の家へ行って、

「だいぶ木の枝が伸びて来たから、枝おろしを頼みます」

と、頼みに行きました。
ところが、隣のオヤジさんは、たいそうな偏屈者で、

「あの木の根元は、うちの屋敷にあるじゃねぇか。
 何も隣の家に文句を言われる筋合いじゃねぇ!」

と言って、 重右衛門を追い返しました。
重右衛門は呆れてしまいましたが、

「ようし、今に見てろ」

と、何やらたくらみを考えました。

何日か経ちました。
ある日、重右衛門は葬式に使う天蓋を一人で作ると、それに長い竹の柄をつけて隣の家の屋敷にかぶせてしまいました。
これには、さすがの偏屈者のオヤジさんも困ってしまい、

「 重右衛門、 重右衛門、いくら何でも俺の家は、棺桶じゃねえぞ!
 すぐに取はずせ!」

と、怒ってやって来たました。
しかし重右衛門はすました顔で、

「天蓋の根元を見ましたかい?
 ちゃんとうちの屋敷にありますからね」

と、答えました。

「すまねえ、すまねえ。俺が悪かった。
 すぐに枝をおろすから、天蓋だけは取りはずしてくれ。縁起でもねぇからよ」

と、隣のオヤジさんもスッカリしょげてしまったそうです。


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