ネズミのもてなし


 昔、「芝山の仁王さま」(芝山町)というお寺に静貫(じょかん)というお坊さまがいました。
静貫さんはたくさんの動物をかわいがっていて、
いつも周りには、犬、ねこ、スズメ、ハトたちがいました。

たくさんの動物たちの中でも一番なついていたのは、嫌われ者のネズミです。
夜になると枕元に来ては、じゃれたり遊んだりしていました。
お寺中のネズミが静貫さんの周りに集まって来て、
布団の中にもぐったり、静貫さんのツルツルの頭をすべって遊んだり、それは大変な騒ぎでした。
それでも静貫さんは、いつもニコニコしています。

 ある年のお正月、いつものように静貫さんが寝ていると、耳元でネズミがチューチューないています。
いつまでもないているので、「これはいつもと違うぞ」と思い、薄目を開けてネズミの様子を見てみました。
するとネズミはチューチューと手招きをしています。
静貫さんはネズミの後を着いて行くことにしました。
 ネズミは静貫さんをいつもお経をあげている仁王さまの部屋に連れて行きました。
真夜中なのに、仁王さまの周りはほんのりと明るくなっていて、いつも静貫さんの周りで遊んでいるネズミたちが勢揃いしていました。
静貫さんは、「一体、何が始まるんだろう」と思いながら腰を下ろすと、ネズミたちは一斉に踊り始めました。
宙返りをしたり、後ろ足だけでひょこひょこと歩いたり、変なリズムで歌ったり、次から次へと面白い芸を見せてくれました。
静貫さんは大喜びで一緒になって手をたたいたり、笑ったりしていましたが、いつのまにか眠ってしまいました。
 だんだん東の空が明るくなって朝になりました。
通りかかった村の人が、すっかり眠っていた静貫さんを起こしてくれました。
「これは大変。お日さまがあんなに高く昇っている。」
静貫さんは飛び起きてあたりを見回しました。
「昨日の夜はネズミたちのおもてなしを受けたなあ」と思いながらもう一度あたりを見回しても、怖い顔の仁王さまがいるだけです。
「このわしをなぐさめようとして、一生懸命踊ってくれたんだなあ」と静貫さんは嬉しさに涙が出て来ました。
それからも静貫さんはネズミたちをかわいがり過ごしました。


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