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田淵の山根の家にいた作大(さくだい=奉公人)は、とんちがよくききます。
ある日のこと、その作大が畑仕事からもどってくるとおかみさんにこう言いました。
「おかみさん、おかみさん。今日、俺が弁当食ってたらさ、鳥のやつが頭の上に飛んで来てね、スアワー(素粟)、スアワーって鳴いて、おらのことを馬鹿にしたんだ。だからね、白い飯も入ってるぞう!って、どなりつけてやったらソックラー(そっかあ)、
ソックラーって鳴いて行ってしまったんだけどね、それにしてもしゃくでたまらねぇ。すまないけどさ、明日から白い飯の弁当をこしらえてくれないですか?」
と言いました。
そう言われればおかみさんも仕方ないから白い飯の弁当を作って、次の日は作大に渡しました。
そして、
「うちの作大は、白い飯のいい弁当だから、いい仕事をするはずだ。まるで弁当が仕事しているようなものだよね」
と言いました。
ところが作大は弁当を持って畑へ行くと、弁当を鍬の柄に縛りつけて自分は昼寝しています。
それで、時間が来ると弁当を空っぽにして、戻って来ました。
おかみさんが、
「今日は、白い飯の弁当だったから仕事はよくはかどったでしょう?」
と訊ねました。ところが…、
「それがね、おかみさん。いくら白い飯の弁当でも、弁当はやっぱり弁当だよ。畑仕事をやらせようと思って、おらぁ一日中弁当を鍬の柄に縛りつけておいたけれど、いつになっても一つも仕事をやらなかったですよ」
と言いました。
これには、おかみさんもすっかり参ってしまいました。
またある年の春の祭の時のこと。
白い餅と、くず米にヨモギの芽を入れた草餅をつきました。
それで、作大の膳には草餅を出したから、作大は何杯か食ったら白い餅が出ると思って、何杯も何杯もおかわりをしました。
座敷では、お客様と旦那さんがうまいごちそうを食いながら酒を飲んでいました。
そこへ作大は、お椀を持って、箸で餅を食うまねをしながら、
「この草餅は、どこまで逃げて行ったって、俺のものだ。逃がしはしねぇぞ。十二杯食ってもまだ草餅だ、草餅だ」
と言って、ノコノコと顔を出しました。
旦那さんは、すっかり恥をかいてしまいました。
またある日のこと。
菊間に真十っていう作大がいました。
真十は、いつも日の高いうちに仕事から戻って来てしまうので、おかみさんはこう言いました。
「真十どん、カナカナぜみが鳴いたら仕事を終わらせて戻って来なせぇよ。」
「ああ、そうですかい。それじゃこれからは、そうすべぇ。」
と言って、畑仕事に出かけて行きました。
ところが、真十は出かけたと思ったら、すぐに戻って来ました。
「あれ、もう戻って来てしまったのかい。カナカナぜみが鳴いたら戻って来なせぇって、言ったでしょう!」
とおかみさんが怒ると、
「だって、おかみさん。おらが畑について、いざ仕事すべぇとしたら、そばの木にとまったセミのやつが、カナカナってうるせえほど鳴いたんだ。だから、戻って来たんだよ」
これには、おかみさんも口をあんぐりあけて、黙ってしまいました。
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