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昔むかし、ある所に爺様と婆様がいました。
ある雨の降る晩のこと、二人は布団にもぐって、こんな話をしていました。
「爺様、爺様。だんだん本降りになって来たね」
「ああ、こんなに降ると、またむうっど(雨もり)が来るぞ」
「そらあ、困るねえ。何しろこの世で一番おっかねえもんは、むうっどだかんね」
「そうだなあ、しし(猪)や、狼もおっかねえが、むうっどほどおっかねえもんは、この世にいねえ」
この話を土間のへっつい(かまど)の灰の中で暖まりながら聞いていたむじなは、ししや狼よりおっかねえむうどとは、一体どんなものだろうと、怖くなって震えていました。
この話を梁の上で聞いていた猿がいました。
猿もむうっどが怖いので、そろっとへっついの中に隠れようとしましたが、うっかりむじなの背中に乗っかってしまいました。
「あっ、むうっどが来た!」
むじなは、すっかりたまげてしまい、へっついを飛び出して、真っ暗な道を逃げ出しました。
猿は猿で、急にへっついから、おかしなものが飛び出して来たから、
「これが、むうっどに違いねえ」
って思い、むじなにギュッとしがみつきました。
離せば、むうっどに食われてしまうと思うから必死です。
それで、村はずれの産土様の前まで来ると猿は、ヒョイッと屋根に飛び移って、スルスルと社の中に隠れました。
むじなは急に背中が軽くなったから、ほっとして社の前にへたばりついて、フウフウ、フウフウと荒い息をしていました。
すると社の鍵穴から毛の生えた細いものが出て来ました。
むじなは「むうっどに違いねえ」とこわごわ見てみると、それが出たり入ったりしていました。
猿は猿で、外にきらりきらりと目玉の青く光るものがいるから、「あれはむうっどに違いねえ」と、おっかなびっくり尻尾を出したり引っ込めたりして、どんなものか見てやろうとしていました。
しかし、むじなは薄気味悪くて、その尻尾に手出しをしません。
そのうちに、猿もついウトウトと居眠りをしてしまいました。
むじなは、尻尾が動かなくなったので、そろっと近寄って、ぎゅっと捕まえました。
猿はビックリ仰天、目を覚まし尻尾を引っ込めようとしましたが、むじなは離しません。
むじなと猿で、尻尾の引っぱりだこになってしまいました。
さあ、こうなると大変です。
猿の尻は、社の戸にこすられて、しまいには赤べろりんになってしまいました。
それで今でも猿の尻は赤いということです。
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