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むかし、昔。
下総の満崎の大尽どんの家に、おつるという奉公人がいたそうです。
おつるは、体が大きく飯をよく食べますが、力が人一倍あったので、気が向いた時は、それは大した働きをしたそうです。
ある年の田植えの時季のこと。
おつるはみんなに向かって、こういいました。
「明日は、おらがどのくれぇの働きが出来るか、
みんなに見せてやるべぇ。
日の出から田植えを始めて、日の入りまでに
千把の苗をおれ一人で植えてみせっからよ」
これには、みんなも呆れてしまいました。
「おつるよ、いくら、にし(主=あなた)が仕事できるって
いっても、そりゃむりだっぺよ」
「まあ、五百肥がせいぜいだっぺ」
「そんな馬鹿なことは、やめたほうがいいよ」
と、みんなが口々に言いました。
しかしおつるは、
「あに言うだよ。おらは、ちゃあんとやってみせるからね」
と、むきになって言います。
みんなは、
「おつるが、そういうなら田植えの支度をしてやるべぇ」
というわけで、夕方には田をきれいにならして、千肥の苗束を田んぼいっぱいにばらまいてやったそうです。
次の日、おつるは朝早く起きて、田んぼに出ました。そして、お日様が出るとすぐに田植えを始めました。
さっさ、さっささっさ、さっさ。
その早いこと、早いこと。
昼飯も食べずに続けたそうです。
村中の者たちも、自分の田を植えながら、おつるが気になってしょうがありません。
ちょいちょい、おつるの田植えの様子を見に来ては、
「よくやるもんだな」
「だが、体がまいっちゃわねぇかな」
などと話していました。
山の端にお日様が沈むころになると、村中の者もみんな見物にやってきました。
とうとう、おつるは最後の苗束を手に持ちました。
そして、股の間からお日様をにらみつけ、
「どうだーい、村の衆よぅ。まだ日は沈まねぇぞ」
と、どなりました。見物の者たちも、
「おぅ、たいしたもんだ」
と、口々にほめました。
ところが、その時です。
おつるはお日様を股からのぞいたまま、田んぼの泥の中に頭から突っ込んで、そのまま動きがとれなくなってしまいました。
慌てて、みんなが助けに行って抱え起こしましたが、おつるはの息はもう止まっていました。
その晩のことです。
おつるが九百九十九把の苗を植えた田が、突然ドボッと落ち込み、深い池になってしまいました。
それ以来、この池を「千把ヶ池」と呼ぶようになったそうです。
そして、お日様の股のぞきはしてはいけないということになりました。
ところで、この話しにはこんなウワサもあります。
大尽どんの旦那が、おつるに一日で千把植えれば、その田んぼをやると言ったというのです。
それでおつるは夢中になって働いて、力尽きて死んでしまったというのです。
それ以来、大尽どんの家も不幸続きで、やがてみんな死に絶えてしまったのだそうです。おつるのた祟りでしょうか。
千把ヶ池は現在、成田市玉造の住宅地になっています。
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